デフォルトルートとは? 仕組みやデフォルトルートについてルーティングの基礎から解説
公開日 : 2024/09/17 最終更新日 : 2024/09/27
「デフォルトルート」とはすべてのネットワーク情報を集約したルート情報です。デフォルトルートを理解するために必要な、IPルーティングの基本知識やデフォルトルートが道筋を指し示す「デフォルトゲートウェイ」についてわかりやすく解説します。
IPルーティングの基本知識
ルーティングテーブル
ルーティングに必要な宛先ネットワークの情報と、次に経由すべきネクストホップを管理しているのが「ルーティングテーブル」です。ルーティングテーブルにはIPパケットを転送するためのルート情報が登録されており、ルーティングの際に宛先IPアドレスからルーティングテーブルのルート情報を検索します。
ルーティングテーブルの作成方法は「スタティックルーティング(静的ルーティング)」と「ダイナミックルーティング(動的ルーティング)」に大別できます。
スタティックルーティングはルート情報を1つ1つ手動で設定する方法です。すべてのルータに設定する必要があるため、大規模なネットワークの場合には向きませんが、運用しやすさの面で小規模なネットワークのルーティングには適しています。
一方ダイナミックルーティングは「ルーティングプロトコル」を用いて隣接するルータと情報を交換し、ルーティングテーブルを自動で作成する方法です。スタティックルーティングとは異なり、手動で設定をする必要があるルータは限られているため、効率的な管理と維持が可能になります。
経路集約(ルート集約)
ルーティングテーブルには転送するすべてのネットワークのルート情報を登録しなければなりませんが、ルート情報が増えるにつれて登録が大変になります。また、IPパケットを受け取ったルータはルーティングテーブル上のルート情報を1つずつ確認しなければならない仕組みであるため、ルート情報が増えるとルータへの負荷も増してしまいます。
登録の手間とルータへの負荷を軽減するための仕組みが「経路集約」です。経路集約ではネクストホップが共通しているルート情報を1つにまとめて、ルーティングテーブルを整理できるとともに、ルート情報のやり取りを減らしてネットワークへの負担を減らせます。そして、経路集約を極限まで推し進めてまとめられたルートが「デフォルトルート」です。
デフォルトルートとは
その「デフォルトルート」とは何ですか?
デフォルトルートとは、経路集約が極限まで推し進められ、すべてのネットワークが集約されたルート情報よ。デフォルトルートアドレスは、IPv4アドレスならば「0.0.0.0/0」、IPv6アドレスならば「::/0」で表されるわ。インターネットに存在する膨大な数のネットワークは、「ネクストホップ」が共通している場合がほとんどだから、デフォルトルートとして集約できるの。
ネクストホップとは「次に経由するIPアドレス」のことですね。
そう。そして、デフォルトルートのルーティングテーブルへの登録は、すべてのネットワークのルート情報の登録を意味するの。ルータが受け取ったIPパケットのアドレスに一致する宛先IPアドレスがルーティングテーブルに登録されていなかった場合は、すべてのネットワークを含むデフォルトルートのネクストホップである「デフォルトゲートウェイ」に送信されるわ。このように、経路の判断ができない場合にデフォルトルートを用いてパケットを転送する処理を「デフォルトルーティング」と呼ぶのよ。
デフォルトゲートウェイとは
「デフォルトゲートウェイ」について詳しく教えてください。
デフォルトゲートウェイは、社内や家庭のネットワークと外部のネットワークを接続する出入口よ。ルータなどのネットワーク機器を指すの。デフォルトゲートウェイのアドレスは「DHCP」というネットワーク機器が通信に必要な情報を自動で取得するためのプロトコルと、ルータから配布される情報からIPv6アドレスを自動設定する「SLAAC」というプロトコルで設定されているわ。IPv4を割り当てるDHCPv4と、IPv6を割り当てるSLAACによる自動設定をそれぞれ解説していくね。
DHCPv4による割り当て
「DHCPv4」とはIPv4におけるDHCPであり、DHCPv4サーバから端末へデフォルトゲートウェイのアドレスを始めとしたネットワーク接続に必要な情報を割り当てるプロトコルです。
DHCPv4では、同じネットワーク内のすべての機器に向けて、同じ信号やデータを同時に送信する「ブロードキャスト」を利用してDHCPv4クライアント(接続を求める機器)がネットワークの設定を問い合わせ、一つの機器にデータを送信する「ユニキャスト」でDHCPv4サーバが応答するという流れで、デフォルトゲートウェイの設定を行います。DHCPv4クライアントとDHCPv4サーバのやりとりでは転送速度の速い「UDP」が用いられています。
SLAACによる割り当て
DHCPv4に対し、「DHCPv6」とはIPv6におけるDHCPであり、DHCPv6サーバからDHCPv6サーバにIPv6アドレスを割り当てる機能ですが、デフォルトゲートウェイの情報はDHCPv6では割り当てられません。IPv6の場合は、デフォルトゲートウェイではSLAACという機能が用いられます。
デフォルトゲートウェイの情報を求めるSLAACクライアントが「RS(Router Solicitation)」というパケットですべてのルータに問い合わせ、SLAACサーバ(ルータ)が「RA(Router Advertisement)」というパケットでSLAACクライアントへ情報を送るという流れでデフォルトゲートウェイの設定を行います。
効率的な通信を可能にするデフォルトルート
膨大な数のネットワーク情報を集約し、ネットワークへの負荷を低減するデフォルトルートは効率的な通信にとって欠かせない存在です。デフォルトルートがパケットを導くデフォルトゲートウェイは、出入口として社内ネットワークと外部ネットワークの接続を支える重要な役割を担っています。
「信頼性が高く、安全で、安定した通信が可能なネットワーク製品」をお探しならHPE Networking Instant Onがおすすめです。HPE Networking Instant Onは、大企業や官公庁に多く採用されているHPE Aruba Networkingの中小規模向けネットワーク製品です。HPE Networking Instant Onのエンタープライズ製品としての品質も受け継がれており、安定した通信を提供します。また多種多様な業種・用途・規模に向けたアクセスポイント・L2スイッチをご用意しており、自動で最新のセキュリティにアップデートされる安心設計です。
さらに、高度なスキルを持ったネットワーク技術者も不要です。クラウドのネットワーク管理ツールで簡単にスマホやPCからセットアップ、管理できます。そして、多くの法人向けネットワーク製品と異なり、管理ツールの利用にサブスクリプション費用はかかりません。リーズナブルにネットワーク管理ツールをご利用いただけます。
通信環境についてお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。御社のお悩みを解消いたします。
通信回線の変更を検討する際、様々な通信速度のプランがあるため頭を悩ましていないでしょうか?1G、5Gなどプロバイダによって異なりますが、よくよく見ると「最大」「理論値」という言葉がついています。なぜそのような表記をしているのでしょうか。それはその回線が「ベストエフォート型」だからです。
本記事ではベストエフォート型の回線の基礎知識について、ギャランティ型との違いやより有効に使うための対策とともに解説します。
ベストエフォート型とは
ユウキ
アヤカさん、最近通信回線の変更を検討しているんですが、プランによって通信速度が異なるので迷っています。特に「最大」「理論値」という言葉がよく見られるんですが、これはどういう意味なのでしょうか?
アヤカ
それは「ベストエフォート型」という回線の特性を示しているわ。ベストエフォート型は「最善の努力」という意味で、通信速度の保証がないサービスを指すの。一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)はこういった記載をしてるわ。
本来高価な専用線を多数の人の共用を前提として提供することで、保証はしないものの実用的な速度とのバランスを考慮しながら安価な価格で提供するのがベストエフォート回線のサービスです。
ユウキ
通信速度の保証がないってどういうことですか?
アヤカ
例えば、インターネット回線の広告で「1ギガ(Gbps)」や「10ギガ(Gbps)」という表示があるでしょう。これは技術規格上の最大速度を示していて、実際の通信速度は多くの要因によって変動することがあるのよ。
ユウキ
なるほど、それってどんな要因があるんですか?
アヤカ
主な要因は以下の通りよ。
要因 |
説明 |
リソースの限界 |
ルーターやスイッチなどのネットワーク機器は、一定のリソース(メモリ、帯域幅など)を持っています。これらのリソースが飽和すると、新しいデータパケットを処理できず、破棄することがあります。 |
エラーの発生 |
ネットワーク上での物理的な障害や機器の故障・外部からの攻撃などの要因によりエラーが発生する場合があり、データの伝送が中断されることがあります。 |
再送の制限 |
データパケットが失われた場合、再送を行うことで伝送を試みることが可能です。しかしベストエフォート型の通信では、再送の回数や時間に制限があるため、ある程度以上の再送を行わないことが一般的です。 |
プロトコルの特性 |
ベストエフォート型の通信でよく使用されるTCP/IPプロトコルは、データの伝送を保証する機能を持っていますが、それでも一定の条件下ではデータの伝送を保証できない場合があります。 |
ユウキ
なるほど~。それに対して通信速度が保証されるようなサービスはあるんですか?
アヤカ
それがギャランティ型よ。ギャランティ型は通信速度や通信品質に一定の保証を持つサービスなの。契約した通信速度や品質を保証するから、安定した通信が期待できるわ。ただベストエフォート型に比べて料金が高いの。専用回線の設置や運用が必要だから、初期費用やランニングコストがかかるのよ。
ベストエフォート型の採用が多い理由
ユウキ
それならなぜ多くの通信サービスはベストエフォート型が提供されているんですか?
アヤカ
それは利用料金の低さが大きな理由よ。ギャランティ型は専用回線の設置や運用が必要だからコストが高くなるの。一方、ベストエフォート型は多くの人が共用することを前提としているから安価に提供できるの。小規模な企業やスタートアップでは、ベストエフォート型の利用が一般的よ。高い通信品質や帯域幅が必要とされない場合、ベストエフォート型の回線で十分。でも、金融機関や医療機関のように高い通信の安全性や信頼性が求められる業種では、ギャランティ型などの専用回線や高品質な通信サービスが選択されることが多いわ。
ベストエフォート型回線を快適に利用するためには?
ユウキ
アヤカさん、ベストエフォート型の通信速度をより快適にする方法はないですか?
IPoE方式の採用
アヤカ
まず、IPoE方式の採用を考えることができるわ。IPoE方式はイーサネット(LANケーブルなど)上でIPパケットを転送する技術よ。従来のPPPoE方式方式だと、通信量が増加すると終端装置が混雑して通信速度が遅くなる可能性があったの。IPoE方式だと終端装置を使用せずに直接インターネットへ接続するから混雑が起こりにくくなるわ。IPv6の普及に伴って、多くのプロバイダがこの方式を採用しているのよ。
ユウキ
IPv6って何ですか?
アヤカ
IPv6は、インターネットの通信を制御するための新しいプロトコルよ。IPv4と比べて、セキュリティ機能が高度で、通信の効率も向上しているの。
周辺機器の見直し
ユウキ
なるほど。他にもありますか?
アヤカ
通信速度に影響を与える要因として、使用しているネットワーク機器の性能も考慮する必要があるわ。たとえば古いルーターやスイッチを使用していると、データの処理速度が遅くなることがあるの。特に無線LANルーターは、規格によって最大通信速度が異なるから、それに合わせて選ぶことが大切よ。
無線LAN規格 |
最大通信速度 |
周波数帯 |
IEEE 802.11ax (Wi-Fi6) |
9.6Gbps |
2.4GHz/5GHz |
IEEE 802.11ac (Wi-Fi5) |
6.9Gbps |
5GHz |
IEEE 802.11n (Wi-Fi4) |
600Mbps |
2.4GHz/5GHz |
IEEE 802.11g |
54Mbps |
2.4GHz |
IEEE 802.11b |
11Mbps |
2.4GHz |
IEEE 802.11a |
54Mbps |
5GHz |
ユウキ
通信速度が最大1Gbpsの回線を使っても無線LANの規格がWi-Fi4だと、600Mbps以上の速度は出ないってことですよね?
アヤカ
その通りよ。1Gbpsの回線をフルに活用するためには、Wi-Fi5やWi-Fi6みたいな新しい規格のルーターが必要になるわ。
ユウキ
なるほど~。それとLANケーブルも気をつけたほうが良いんですか…?
アヤカ
LANケーブルは「カテゴリ」という規格で分類されていて、それぞれのカテゴリによって最大通信速度が異なるのよ。
ケーブルのカテゴリ |
最大通信速度 |
CAT8 |
40Gbps |
CAT7A |
10Gbps |
CAT7 |
10Gbps |
CAT6A |
10Gbps |
CAT6 |
1Gbps |
CAT5e |
1Gbps |
CAT5 |
100Mbps |
ユウキ
こんなにも違うんですね!じゃあ、快適な通信速度を求めるなら、どのカテゴリのケーブルを使ったらいいですか?
アヤカ
小規模なオフィスでの利用を考えるなら、CAT5e以上のケーブルを選ぶと良いわ。
まずは通信速度を計測してみる
多くの通信回線はベストエフォート型のため、いかに快適に利用するかが重要です。まずは実際に通信速度を計測してみましょう。あきらかに速度が遅い場合、対策を取る必要があります。無線LANルーターやスイッチの性能が古い場合は変更を検討しましょう。
通信環境についてお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。御社のお悩みを解消いたします。
先輩、復習がてら質問なのですが、「ルーティング」とはデータの宛先が接続されているネットワークを判断して、経路を導き出して転送先を切り替える機能ですよね。
そうね。対象となるデータは、インターネット層に位置する「IPパケット」になるわね。
「宛先IPアドレス」とか、いろいろ用語があったような…。
そう。ルーティングには、宛先となる機器の情報である「宛先IPアドレス」「サブネットマスク」と、次に経由するIPアドレスを指す「ネクストホップアドレス」が必要ね。