コリジョンドメインとは? ブロードキャストドメインとの違いやコリジョンの回避方法について解説
公開日 : 2024/09/10 最終更新日 : 2024/09/27
「コリジョン(collision)」は衝突の意味を持ち、「ドメイン(domain)」は範囲や領域の意味を持つ英単語ですが、「コリジョンドメイン」とはネットワークにおいてどのような意味を持つのでしょうか?
ネットワークを構成する基本的な概念から、コリジョンドメインの概要や「ブロードキャストドメイン」との違い、有線通信・無線通信における「コリジョン」の回避方法について解説します。
コリジョンドメインとは
コリジョンの回避方法|CSMA/CDとは?
ところで、コリジョンが発生してしまうのはどのような通信方式の場合なのですか? また、コリジョンドメインの構築によってどのようにコリジョンを回避するのでしょうか?
良い質問ね! 今から説明していくよ。
全二重通信(Full Duplex)と半二重通信(Half Duplex)
イーサネットには「全二重通信(Full Duplex)」と「半二重通信(Half Duplex)」という2種類の通信方式があります。
全二重通信とは、データの伝送路を受信用と送信用に分けた通信方式です。受信と送信を同時に行えるため、コリジョンが発生しづらく、伝送速度の高速化が可能です。現在のイーサネットでは全二重通信が基本とされています。
一方、コリジョンが発生してしまうのは半二重通信という通信方式です。全二重通信とは異なり、受信用と送信用の伝送路が同一であるため、都度、通信方向を切り替える必要があります。複数の機器が同じタイミングでデータを送信してしまった場合にコリジョンが発生するため、CSMA/CDという技術によって解消していました。
CSMA/CDとは
CSMA/CDはイーサネットの半二重通信で用いられているアクセス制御方式です。前述のとおり、半二重通信は受信用と送信用の伝送路が同一であるため、まずCSMA/CDでは伝送路の使用状況を確認してから送信を行います。
確認してもなおコリジョンが発生してしまった場合、「ジャム信号」というコリジョン発生を知らせる特殊な信号を送信します。衝突が検知され、ジャム信号が届く範囲がコリジョンドメインです。ジャム信号を受け取った場合は、ランダムな時間だけ待ってデータを再送する「バックオフ」という処理を行います。以上がCSMA/CDによる一連の制御方式です。
CSMA/CDではデータの送受信前に伝送路の状況を確認するものの、伝送路の通信量が増えればコリジョン発生の可能性も高まり、再送の増加によってさらに通信量が増えてしまいます。通信の効率を高めるためには、ネットワークの機能を7つの階層に分類して整理した「OSI参照モデル」におけるデータリンク層のネットワーク機器による「コリジョンドメインの分割」が重要です。これにより、同一の伝送路を使うデバイスを減らしてコリジョン発生のリスクを低減し、コリジョン発生時に影響が出る範囲を狭められるのです。
コリジョンドメインとブロードキャストドメイン
コリジョンドメインと似た概念に「ブロードキャストドメイン」があるわ。ちゃんと覚えている?
ち…ちゃんと覚えていますよ…。同じネットワーク内のすべての機器に向けてデータなどを同時に送信する「ブロードキャスト」ですよね。
そう、その「ブロードキャスト」という通信方式において送信される「ブロードキャストフレーム」が届く範囲のことを、「ブロードキャストドメイン」というのだったよね。データが送信される範囲を示しているという点では、コリジョンドメインも同じね。
この2つの違いは何ですか?
ブロードキャストドメインは、コリジョンドメインのようにブリッジなどで分割できないの。ルータは受け取ったブロードキャストフレームを別のネットワークに送らないから、ネットワークの範囲がブロードキャストドメインに相当するけれど、L2スイッチやL3スイッチの「VLAN機能」によって分割が可能よ。
コリジョンドメインでコリジョンを検出する
現在では全二重通信の方が主流ですが、半二重通信が採用されている場合は、コリジョンが発生します。また検出されている範囲はコリジョンドメインであり、ネットワーク機器による分割で通信効率を高められると理解しておきましょう。全二重通信が使用できる場合は半二重通信から切り替え、そもそもコリジョンを発生させないようなネットワークを構築するのも重要です。
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通信回線の変更を検討する際、様々な通信速度のプランがあるため頭を悩ましていないでしょうか?1G、5Gなどプロバイダによって異なりますが、よくよく見ると「最大」「理論値」という言葉がついています。なぜそのような表記をしているのでしょうか。それはその回線が「ベストエフォート型」だからです。
本記事ではベストエフォート型の回線の基礎知識について、ギャランティ型との違いやより有効に使うための対策とともに解説します。
ベストエフォート型とは
ユウキ
アヤカさん、最近通信回線の変更を検討しているんですが、プランによって通信速度が異なるので迷っています。特に「最大」「理論値」という言葉がよく見られるんですが、これはどういう意味なのでしょうか?
アヤカ
それは「ベストエフォート型」という回線の特性を示しているわ。ベストエフォート型は「最善の努力」という意味で、通信速度の保証がないサービスを指すの。一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)はこういった記載をしてるわ。
本来高価な専用線を多数の人の共用を前提として提供することで、保証はしないものの実用的な速度とのバランスを考慮しながら安価な価格で提供するのがベストエフォート回線のサービスです。
ユウキ
通信速度の保証がないってどういうことですか?
アヤカ
例えば、インターネット回線の広告で「1ギガ(Gbps)」や「10ギガ(Gbps)」という表示があるでしょう。これは技術規格上の最大速度を示していて、実際の通信速度は多くの要因によって変動することがあるのよ。
ユウキ
なるほど、それってどんな要因があるんですか?
アヤカ
主な要因は以下の通りよ。
要因 |
説明 |
リソースの限界 |
ルーターやスイッチなどのネットワーク機器は、一定のリソース(メモリ、帯域幅など)を持っています。これらのリソースが飽和すると、新しいデータパケットを処理できず、破棄することがあります。 |
エラーの発生 |
ネットワーク上での物理的な障害や機器の故障・外部からの攻撃などの要因によりエラーが発生する場合があり、データの伝送が中断されることがあります。 |
再送の制限 |
データパケットが失われた場合、再送を行うことで伝送を試みることが可能です。しかしベストエフォート型の通信では、再送の回数や時間に制限があるため、ある程度以上の再送を行わないことが一般的です。 |
プロトコルの特性 |
ベストエフォート型の通信でよく使用されるTCP/IPプロトコルは、データの伝送を保証する機能を持っていますが、それでも一定の条件下ではデータの伝送を保証できない場合があります。 |
ユウキ
なるほど~。それに対して通信速度が保証されるようなサービスはあるんですか?
アヤカ
それがギャランティ型よ。ギャランティ型は通信速度や通信品質に一定の保証を持つサービスなの。契約した通信速度や品質を保証するから、安定した通信が期待できるわ。ただベストエフォート型に比べて料金が高いの。専用回線の設置や運用が必要だから、初期費用やランニングコストがかかるのよ。
ベストエフォート型の採用が多い理由
ユウキ
それならなぜ多くの通信サービスはベストエフォート型が提供されているんですか?
アヤカ
それは利用料金の低さが大きな理由よ。ギャランティ型は専用回線の設置や運用が必要だからコストが高くなるの。一方、ベストエフォート型は多くの人が共用することを前提としているから安価に提供できるの。小規模な企業やスタートアップでは、ベストエフォート型の利用が一般的よ。高い通信品質や帯域幅が必要とされない場合、ベストエフォート型の回線で十分。でも、金融機関や医療機関のように高い通信の安全性や信頼性が求められる業種では、ギャランティ型などの専用回線や高品質な通信サービスが選択されることが多いわ。
ベストエフォート型回線を快適に利用するためには?
ユウキ
アヤカさん、ベストエフォート型の通信速度をより快適にする方法はないですか?
IPoE方式の採用
アヤカ
まず、IPoE方式の採用を考えることができるわ。IPoE方式はイーサネット(LANケーブルなど)上でIPパケットを転送する技術よ。従来のPPPoE方式方式だと、通信量が増加すると終端装置が混雑して通信速度が遅くなる可能性があったの。IPoE方式だと終端装置を使用せずに直接インターネットへ接続するから混雑が起こりにくくなるわ。IPv6の普及に伴って、多くのプロバイダがこの方式を採用しているのよ。
ユウキ
IPv6って何ですか?
アヤカ
IPv6は、インターネットの通信を制御するための新しいプロトコルよ。IPv4と比べて、セキュリティ機能が高度で、通信の効率も向上しているの。
周辺機器の見直し
ユウキ
なるほど。他にもありますか?
アヤカ
通信速度に影響を与える要因として、使用しているネットワーク機器の性能も考慮する必要があるわ。たとえば古いルーターやスイッチを使用していると、データの処理速度が遅くなることがあるの。特に無線LANルーターは、規格によって最大通信速度が異なるから、それに合わせて選ぶことが大切よ。
無線LAN規格 |
最大通信速度 |
周波数帯 |
IEEE 802.11ax (Wi-Fi6) |
9.6Gbps |
2.4GHz/5GHz |
IEEE 802.11ac (Wi-Fi5) |
6.9Gbps |
5GHz |
IEEE 802.11n (Wi-Fi4) |
600Mbps |
2.4GHz/5GHz |
IEEE 802.11g |
54Mbps |
2.4GHz |
IEEE 802.11b |
11Mbps |
2.4GHz |
IEEE 802.11a |
54Mbps |
5GHz |
ユウキ
通信速度が最大1Gbpsの回線を使っても無線LANの規格がWi-Fi4だと、600Mbps以上の速度は出ないってことですよね?
アヤカ
その通りよ。1Gbpsの回線をフルに活用するためには、Wi-Fi5やWi-Fi6みたいな新しい規格のルーターが必要になるわ。
ユウキ
なるほど~。それとLANケーブルも気をつけたほうが良いんですか…?
アヤカ
LANケーブルは「カテゴリ」という規格で分類されていて、それぞれのカテゴリによって最大通信速度が異なるのよ。
ケーブルのカテゴリ |
最大通信速度 |
CAT8 |
40Gbps |
CAT7A |
10Gbps |
CAT7 |
10Gbps |
CAT6A |
10Gbps |
CAT6 |
1Gbps |
CAT5e |
1Gbps |
CAT5 |
100Mbps |
ユウキ
こんなにも違うんですね!じゃあ、快適な通信速度を求めるなら、どのカテゴリのケーブルを使ったらいいですか?
アヤカ
小規模なオフィスでの利用を考えるなら、CAT5e以上のケーブルを選ぶと良いわ。
まずは通信速度を計測してみる
多くの通信回線はベストエフォート型のため、いかに快適に利用するかが重要です。まずは実際に通信速度を計測してみましょう。あきらかに速度が遅い場合、対策を取る必要があります。無線LANルーターやスイッチの性能が古い場合は変更を検討しましょう。
通信環境についてお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。御社のお悩みを解消いたします。
先輩、また用語について質問があるのですが…。
良いわよ。今回はどんな用語かしら?
「コリジョンドメイン」って何ですか?
なるほど、まずは「コリジョン」の説明をする必要があるわね。コリジョンとは、端的に言うとデータ同士の衝突よ。有線接続の際のルールであるイーサネットや無線LANにおいて、同じ伝送路を使用する複数の機器が、同じタイミングでデータを送信することによって発生するの。イーサネットと無線LANは、TCP/IPにおける一番下の階層の「ネットワークインターフェース層」にある、同じネットワーク内でデータを転送するためのプロトコルね。ここで衝突が起こってデータが破損し、正常にデータの送信が完了できなくなって、通信の遅延をもたらすの。
▶プロトコルスタックとは?プロトコルの意味やTCP/IPの構造までわかりやすく解説
コリジョンについては理解できました。それではコリジョンドメインについて教えてください!
コリジョンが発生し、コリジョンの検知が可能な範囲が「コリジョンドメイン」と呼ばれているわ。イーサネットにおけるコリジョンを回避するための手段として開発された「CSMA/CD」という方式で構築されたネットワークで使われる概念ね。