プロトコルスタックとは?プロトコルの意味やTCP/IPの構造までわかりやすく解説
公開日 : 2024/08/15 最終更新日 : 2024/09/27
「プロトコルスタック」は、通信をするための約束事である「プロトコル」を機能させるための重要な構造です。通信プロトコルの基本的な概要について触れつつ、通信に欠かせないプロトコルスタックについてわかりやすく説明します。またプロトコルスタックの代表例であり、ネットワークの共通言語ともいえる「TCP/IP」や「OSI」といった階層モデルについても、図を用いて詳しく解説します。
プロトコルスタックとは
そもそもプロトコルとは
そもそもの質問で恐縮ですが、「プロトコル」って何ですか?
「プロトコル」とは、通信におけるルールや約束事を表す用語よ。「通信手順」や「通信規約」とも呼ばれているわ。
プロトコルがないとどうなるのですか?
デバイス同士が同じプロトコルを利用していないと、通信を成立できないの。人間同士のコミュニケーションに当てはめると、同じ言語で話さないと会話が成立しないよね。プロトコルは通信に必要な機能ごとに備わっているから、通信を行うデバイスのメーカーや、OS、無線・有線に関係なく、同じようにデータのやりとりを実現できるの。
同じ言語でないと話ができない、というのはわかりやすいたとえですね。
プロトコルの役割は多岐に渡っているわ。例えば、通信に使用するケーブルの素材やコネクタの形状などの物理的な仕様の決定を行うの。「http://www.~」といったURLに代表されるように、通信する相手を特定するのも一つのプロトコルなのよ。また、通信中のデータの紛失・破損の可能性に備え、エラーの検知や再送する仕組みを提供するプロトコルや、正しい通信相手かどうかの認証や、通信を暗号化する仕組みを提供するプロトコルも存在するわ。
プロトコルスタックの代表例
プロトコルスタックにはどのような種類があるのですか?
Microsoftの「NETBEUI」、IBMの「SNA」、Novellの「IPX/SPX」など、プロトコルスタック(ネットワークアーキテクチャ)にはいくつか種類があるわ。でも、通信の際は同じプロトコルスタックを利用する必要があるの。次で、特に主要な「TCP/IP参照モデル」と「OSI参照モデル」について解説していくね。
TCP/IP
TCP/IP参照モデルはTCPとIPを中心としたプロトコルスタックであり、1970年代にアメリカ国防総省のDARPAが開発したため「DARPAモデル」とも呼ばれています。その歴史の古さや実用性が重視されている点から、現在ほとんどすべてのプロトコルがTCP/IP参照モデルに合わせて作られており、ネットワークの共通言語となっています。
TCP/IP参照モデルは「リンク(ネットワークインターフェース)層」、「インターネット層」、「トランスポート層」、「アプリケーション層」の4階層で構成されています。それぞれの階層で順々に処理を行い、次の階層に引き渡します。別の階層の処理には関与しないため、階層ごとのトラブルシューティングが可能です。
リンク層はルータやレイヤ3スイッチで区切られる同じネットワーク内で、デジタルデータを変換して、ケーブルや電波などの伝送媒体で転送する役割を担います。「イーサネット(IEEE 802.3)」や「Wi-Fi(IEEE 802.11)」がリンク層のプロトコルとして代表的です。
一方インターネット層は、異なるネットワーク間でのデータの転送を行います。インターネット上のアドレス指定などを行う「IP」やネットワークの通信状況を診断する「ICMP」が代表的なプロトコルです。
また、トランスポート層の役割は、アプリケーションを識別してデータを振り分けることであり、データ送受信の信頼性・順序性を確保する「TCP」や高速通信を可能にする「UDP」を含みます。
アプリケーション層の役割は、ユーザーにアプリケーションを提供するためのデータのフォーマットや処理手順の決定です。ユーザーとサーバがデータを送受信するための「HTTP」やネットワーク機器が通信に必要な情報を自動で取得するための「DHCP」、ドメイン名とIPアドレスを紐づける「DNS」などのプロトコルが含まれます。
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TCP/IP参照モデルの構造と、代表的なプロトコルを対応付けた表は以下の通りです。
※みやたひろし『図解入門TCP/IP』 p.12 表1.2.2をもとに作成
OSI
OSI(Open Systems Interconnection/開放型システム間相互接続)参照モデルとは、1984年にISO(国際標準化機構)が策定した、階層構造モデルです。OSI参照モデルは下から順に、「物理層(L1)」、「データリンク層(L2)」、「ネットワーク層(L3)」、「トランスポート層(L4)」、「セッション層(L5)」、「プレゼンテーション層(L6)」、「アプリケーション層(L7)」の7層で構成されています。
物理層ではコネクタの形状などの物理的な接続を定め、データリンク層ではネットワーク内の通信を実現します。ネットワーク層とトランスポート層の役割はTCP/IP参照モデルと同様で、ネットワーク層では異なるネットワーク間の通信、トランスポート層ではアプリケーションの識別とデータの振り分けを実施します。
セッション層では、ログイン・ログアウトなどの、通信の開始から終了までを表す「セッション」を管理します。プレゼンテーション層ではデータをアプリケーション層に通信できる方式に変換し、アプリケーション層でアプリケーションの機能をユーザーに提供します。
国際的な標準化を目指して作られましたが、通信機能を細かく分類した結果、使い勝手が悪くなってしまい、このモデルに純粋に対応しているプロトコルはありません。OSI参照モデルの定めるネットワーク層は、実用性はないものの通信機能の体系的な理解には役立っています。
通信に欠かせないプロトコルスタック
プロトコルスタックの理解はネットワーク全体の理解に役立ちます。通信の拡張・変更やトラブルシュートの際は、各階層で機能するプロトコルや、関係するインターネット機器を確認してみましょう。
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アヤカさん、またわからない用語が出てきました。「プロトコルスタック」とは何ですか?
今日はプロトコルスタックね。そもそも、プロトコルスタックの「スタック(stack)」とは、積み重なりという意味よ。だからプロトコルスタックとは、複数のプロトコルの組み合わせ、あるいはプロトコルの組み合わせを実装するプログラムの部品を表しているわ。プロトコルスタックは、一揃いや一緒に機能するものの集まりを指す「スイート(suite)」から来ている「プロトコルスイート」や、「ネットワークアーキテクチャ」とも呼ばれているの。
いろいろな呼び方があるのですね。
基本的に役割、機能を1つしか持たないプロトコルを積み重ねてプロトコルスタックとして階層的に構築すると、相互に連携して全体として機能するようになるの。階層化することで、変更や拡張が容易になるというメリットもあるわ。