フラッディングとは? その意味と概要について解説
公開日 : 2024/10/23
フラッディングとは、ネットワークや情報システムにおいて、過剰なデータやリクエストが一度に送り込まれ、システムの正常な動作が妨げられる現象を指します。この現象は、サイバー攻撃やシステムの誤操作によって引き起こされ、場合によっては重大な障害やサービス停止を招くことがあります。
デジタル化が進んだ現代社会において、ネットワークの安定性はビジネスにおいて欠かせない要素です。そのため、フラッディングが引き起こすリスクを理解し、適切な対策を講じることは、ITインフラやサービスの信頼性を確保するために重要です。本記事では、フラッディングの基本的な概念や種類、その影響、そして具体的な対策について詳しく解説します。
フラッディングとは?
意図的なフラッディング
意図的なフラッディングは別名「フラッディング攻撃」ともいい、主に悪意あるサイバー攻撃の一環として行われます。DDoS攻撃やスパム攻撃は、その典型例です。攻撃者はシステムの弱点を突き、過剰なデータやリクエストを送り込むことで、ターゲットのサービスを停止させたり、業務を妨害したりすることを目的としています。こうした攻撃は、経済的な利益や、政治的・社会的なメッセージの発信、個人や団体への嫌がらせなどさまざまな意図を持って行われます。
非意図的なフラッディング
非意図的なフラッディングは、悪意のない行動や技術的な不備によって発生します。例えば、システムの設定ミスにより、データトラフィックが許容量を超えて増加することがあります。また、特定のイベントやキャンペーンが予想以上に注目を集めた結果、大量のアクセスが集中し、Webサイトがダウンするのも非意図的なフラッディングの一例です。このようなケースでは、攻撃の意図はなくてもシステムに深刻な影響が及ぶことになります。
フラッディングが引き起こす影響
フラッディングの概要についてはわかりました。それでは、フラッディングはどのような影響を引き起こすのでしょうか?
フラッディングは、ネットワークやシステムに多大な負荷がかかることで、さまざまな影響を引き起こすわ。その影響は技術的なものだけでなく、ビジネスやユーザー体験にも大きく及ぶのよ。
システムへの技術的な影響
フラッディングが最も直接的に影響を及ぼすのは、ネットワークやシステムの技術的側面です。過剰なデータトラフィックがシステムに流れ込むと、ネットワークの帯域幅が圧迫され、通信が滞る「ネットワーク障害」が発生します。システムが処理しきれないリクエストが増え続ければ、最終的にはサービスの停止に至ります。
さらに、フラッディングはデータベースやサーバーに過負荷をかけることで、データの消失や破損を引き起こすリスクもあります。これにより、システム全体が復旧不可能な状態になることもあり、企業や組織にとって深刻な事態を招く可能性があります。
ビジネスへの影響
技術的な問題にとどまらず、フラッディングはビジネスにも重大な影響を与えます。サービスの停止が長引くと、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージの悪化につながります。特にECなどのオンラインビジネスでは、サービスの停止や遅延が直接的に売上減少を招くことが多く、その経済的損失は甚大です。
フラッディングが引き金となり、最悪の場合、顧客の減少や取引先との契約解除といった事態に及ぶ可能性もあります。ビジネスにおいてオンラインの重要性がどんどん高まっている現代において、フラッディング対策は不可欠です。
ユーザーへの影響
フラッディングによるシステム障害は、ユーザーにも直接的な影響を及ぼします。サービスの利用が妨げられることで、ユーザーはストレスを感じ、混乱することが多くなります。特に、オンラインサービスを利用するユーザーにとって、システムの停止や遅延は大きなフラストレーションの原因となります。
また、フラッディングが原因でデータの消失や個人情報の漏洩が発生した場合、ユーザーに多くの損害や不安を与えることになります。結果として、企業の責任が問われることは避けられないでしょう。
DoS攻撃・DDoS攻撃とフラッディング攻撃の違いは?
そういえば、以前DoS攻撃やDDoS攻撃について教えてもらったと思います。これらの攻撃とは何が違うのですか?
DoS攻撃やDDoS攻撃とフラッディング攻撃は、いずれもネットワークやシステムに過剰な負荷をかけて正常なサービスを妨害するものね。だから混同してしまうよね。それぞれの違いについて解説していくよ。
DoS攻撃(Denial of Service)
DoS攻撃は、単一のコンピュータから大量のリクエストをターゲットとなるシステムに送信し、そのシステムの処理能力を超えさせることで、サービスを停止させる攻撃手法です。典型的なものには、システムにアクセスできなくなる、応答が極端に遅くなるといった影響があります。DoS攻撃はフラッディングを引き起こすほかに、不正なデータを用いてソフトウェアの脆弱性を攻撃し、サービスの正常な提供を妨げる場合もあります。
DDoS攻撃(Distributed Denial of Service)
DDoS攻撃は、DoS攻撃を大規模にしたもので、複数のコンピュータから一斉にリクエストを送信することで、ターゲットを攻撃します。DDoS攻撃の特徴は、その分散性にあり、攻撃元が世界中に点在するため、攻撃を防御するのが非常に困難です。また、IPアドレスなどを分散させ、攻撃元の特定を妨害しようとします。
フラッディング攻撃(Flooding Attack)
フラッディング攻撃は、DoS攻撃やDDoS攻撃の一種として分類されることがありますが、特に大量のデータパケットやリクエストをネットワークやシステムに送り込み、帯域幅やリソースを消費させることで、サービスを妨害する手法を指します。すなわち、処理能力を超えたデータやリクエストによりシステムの正常な動作が妨げられる「フラッディング」が必要条件となっている点で、DoS攻撃やDDoS攻撃とは異なります。また、「フラッディング」自体は、意図的な攻撃だけでなく、ネットワーク設定の不備や誤操作によって偶発的に発生することもあります。
フラッディング攻撃の手法4パターン
フラッディング攻撃についてより知りたくなってきました。具体的にはどのような攻撃パターンがあるのでしょうか。
4つの代表的なフラッディング攻撃の手法とその特徴について解説していくね。
SYNフラッド攻撃
SYNフラッド攻撃は、TCP/IPプロトコルにおいて通信を確立するためのプロトコルとして用いられる「3ウェイハンドシェイク(SYN・SYN-ACK・ACK)」を悪用した攻撃です。3ウェイハンドシェイクとは、端的に言うと「①送信側がデータを送る合図をする」「②受信側もデータを送る合図をする」「③送信側が受信する態勢に入る」というやりとりを通じ、接続を行う仕組みです。
攻撃者は大量のSYNリクエストをターゲットサーバーに送り付けますが、応答のSYN-ACKを受け取っても最後のACKを返さずに通信を中断します。この状態では、ターゲットサーバーがリソースを消費して「待ち状態」になり続け、多数の未完了接続が発生し、新しい接続要求を処理できなくなります。その結果、正規ユーザーがサービスを利用できなくなってしまいます。
ICMPフラッド攻撃(Pingフラッド攻撃)
ICMPフラッド攻撃は、TCP/IPネットワークで特定の機器の応答可能性を調べるPing(Packet INternet Groper)プログラムなどで使用される「ICMPプロトコル」を利用する攻撃手法です。攻撃者は、ICMPリクエストを大量に送信することでネットワーク帯域を消費し、システムリソースを圧迫します。結果として、ターゲットのネットワークが遅延し、正常な通信が妨げられます。
UDPフラッド攻撃
UDPフラッド攻撃は、ポート番号を用いてデータを振り分けるUDP(ユーザーデータグラムプロトコル)を利用したフラッディング攻撃です。攻撃者は大量のUDPパケットをランダムなポートに送りつけます。ターゲットとなるシステムは、受信したUDPパケットがどのアプリケーションに関連付けられているのか確認するために応答を返す必要があり、これによりシステムリソースが消耗します。UDPは接続を確立しないプロトコルであるため、攻撃を検出・防止するのが難しく、DDoS攻撃の手法としても使われています。
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F5アタック
F5アタックは、ウェブブラウザで「F5」キーを押すことでページをリロードできることに由来し、攻撃者が同じページを何度もリロードすることで、ターゲットサーバーに負荷をかける手法です。多数のユーザーがこの行為を同時に行うことで、サーバーに過剰なトラフィックが発生し、サービスが停止する可能性があります。この手法は、特にオンラインイベントや重要な発表が行われる際に、アクセス集中を意図的に起こすために使われることがあります。
これらの攻撃手法は、それぞれ異なるプロトコルや手法を利用していますが、共通してターゲットのリソースを消耗させ、サービスを停止させることを目的としています。各手法に対して適切な防御策を講じることが、ネットワークやシステムの安全性を確保するために重要です。
フラッディングに対する対策
フラッディングがいかに恐ろしい現象かわかりました。では、どのような対策方法があるのでしょうか?
適切な対策が不可欠ね。ここからは、フラッディング防止のために取るべき技術的な対策、個人・組織的な対策を紹介していくよ。
フラッディング防止のための技術的な対策
フラッディングからシステムを守るためには、まず技術的な対策を強化することが重要です。具体的には、以下のような手法が有効です。
フィルタリング
フラッディング攻撃を検知し、不要なトラフィックをブロックするためのフィルタリング技術を導入することが推奨されます。これには、ファイアウォールや侵入防止システム(IPS)、DDoS対策ソリューションなどが含まれます。これらのツールは、異常なトラフィックパターンをリアルタイムで監視し、自動的にブロックする機能を持っています。
キャパシティの強化・最適化
ネットワークやサーバーのキャパシティを強化することも、フラッディングへの有効な対策です。特に、クラウドベースのインフラストラクチャを活用することで、需要に応じてリソースをスケールアップ(パフォーマンスを向上させること)し、過剰なトラフィックにも対応できる柔軟性を持たせることができます。また、複数のサーバーに負荷を分散させる装置である「ロードバランサー」を使用して、トラフィックを複数のサーバーに分散させることでシステム全体の負荷を軽減し、フラッディングによる影響を最小限に抑えることも可能です。
攻撃の早期検知
AIや機械学習を活用した監視システムを導入することも、フラッディング攻撃の早期検知を可能にします。これらのシステムは、通常のトラフィックパターンを学習し、異常なトラフィックが発生した際に即座にアラートを出すことで、迅速な対応を支援します。
フラッディングに対する個人・組織の対策
技術的な対策と併せて、個人や組織全体での対策も欠かせません。組織的なアプローチを取り入れることで、フラッディングに対する防御力をさらに高めることができます。
ポリシーの策定
まず、フラッディングを含むサイバー攻撃に対するポリシーを策定し、従業員に周知徹底することが重要です。このポリシーには、異常なトラフィックが発生した場合の対応手順や、システムの定期的なメンテナンス、セキュリティアップデートの実施についての指針が含まれます。
社員教育
フラッディングのリスクやその影響について、全社員に教育を行うことも重要です。技術スタッフだけでなく、全社的にフラッディングの基本的な知識やリスク、対応方法などについて理解しておくことで、危険性を最小限に抑えることが可能です。定期的なセキュリティトレーニングやシミュレーションを通じて、フラッディングへの備えを強化することが求められます。
インシデント対応計画の策定
組織はフラッディングが発生した場合に備え、インシデント対応計画を策定しておくことが推奨されます。この計画には、迅速に対応するための役割分担や、外部のセキュリティ専門家との連携方法が含まれます。適切な対応計画があることで、被害を最小限に抑えることができます。
フラッディング対策の重要性と『HPE Networking Instant On』
フラッディングは、ネットワークやシステムにとって重大な脅威であり、特にオンラインサービスやビジネスに従事する企業は、そのリスクを無視できません。本記事では、フラッディングの基本的な定義から種類、影響、そして対策に至るまで、包括的に解説してきました。ここで改めて、フラッディング対策の必要性とその基本を再確認することが重要です。
『HPE Networking Instant On』は、比較的小規模な事業所向けのネットワーク環境構築に貢献するネットワーク製品でありながら、フラッディングに対し未然に対策し安定したネットワーク環境を確保するためにも貢献してくれます。
アクセスポイントやスイッチの通信状況はモバイルアプリやWebポータルを通し、クラウド上で管理することが可能で、ネットワークに問題が発生した場合に備えてアラート機能も搭載されています。また、グローバル・ストーム・コントロールやレート制限など、スイッチでのフラッディング対策や特定のサイトやアプリのカテゴリーをブロックする機能などもラインナップには含まれます。
もちろん、日頃の利用において高速アクセスや管理の簡単さなどが保証されているのも重要なメリットです。フラッディングやDoS攻撃は今後もネットワークの脅威として存在しますが、適切な対策と準備を行うことで、そのリスクを最小限に抑え、安心してデジタル活用を行いながらビジネスを前に進められるはずです。これからもフラッディング対策を強化していきましょう。
先輩、いまよろしいでしょうか。また用語について質問があるのですが…。
(また頼られている私…!)また用語の説明ね。わかったわ。今回はどんな用語なの?
フラッディングとは何ですか?
フラッディング(flooding)は、「flood(洪水)」という意味の単語が動名詞化された情報通信用語よ。データやリクエストが氾濫してシステムに濁流が巻き起こっている様子をイメージしてつくられた言葉ね。その原因は、意図的/非意図的で分類することができるの。
詳しく教えてください!