マルチキャストアドレスとは? 効率的なデータ配信を実現するIPアドレス

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50台のパソコンにデータを送信したい場合を考えてみましょう。ユニキャスト(1対1の通信方法)では50パケットが必要になるため、回線効率が良くありません。それに対してマルチキャストでは、1パケットで済むため、負荷が軽くなります。

本記事では、マルチキャストアドレスの概要と、メリット・デメリットなどについて解説していきます。  

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マルチキャストアドレスとは

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これまでさまざまなアドレスについて教えてもらいました。もう1つ、マルチキャストアドレスについてお聞きしてもいいですか?

まずは自分で調べなさいよ…。いいわよ。マルチキャストアドレスは、特定の決められた範囲内の複数ホストに送信するIPアドレスのことね。IPアドレスについてはもう大丈夫? 

IPアドレスにはIPv4とIPv6の2つがあって、IPv4のほうが枯渇して、IPv6が普及してきている…。そんな話でしたよね。

その通りね。マルチキャストアドレスにもメリットとデメリットがあるから、ここでしっかりと覚えておこうね。 

IPv6ではIPアドレスは3種類

これも復習になってしまうけど、IPv6には「ユニキャストアドレス」「エニーキャストアドレス」そして「マルチキャストアドレス」の3種類のアドレスがあるの。IPv4にあった「ブロードキャストアドレス」はIPv6には無くて、マルチキャストアドレスがその代わりになっているわ。

ユニキャストアドレスは1対1の通信でしたよね。

そうね。エニーキャストアドレスはサーバーなどの複数のノードに同じユニキャストアドレスを割り当てておいて、最も近いノードにパケット(データ)を転送するときに使われるの。 

エニーキャストアドレスもマルチキャストアドレスも、複数のノードにIPアドレスを割り当てていますね。

そうなの。でも、エニーキャストアドレスは一番近いホストと通信するものだけど、マルチキャストアドレスは決められた範囲に一斉送信するところが違うわね。 

マルチキャストアドレスのプロトコル「UDP」

マルチキャストアドレスには「UDP」というプロトコルが使われているわ。 

アヤカさんもお風呂に凝っているのですね。自分も炭酸ガス系の入浴剤にハマっています。

風呂に凝るじゃなくて「プロトコル」ね! 国際郵便を例に話すけれど、国際郵便は宛名の記入方法に決まり(ルール)があるわよね。郵便物を確実に届けるには、ルールに沿った書き方をしないといけないよね。同じように、ネットワークでも通信上のルールが必要になるの。これをプロトコルと言うのよ。

まあ、僕のプライベートの服の色は「黒と紺」ですけれどね。

話を続けるよ。ユニキャストアドレスとマルチキャストアドレスでは、プロトコルが違うの。ユニキャストアドレスは「TCP」というプロトコルを使うわ。TCPはコネクション型と言って、相手に確実にデータを届けることを保証して信頼性を保っているの。 

確実にデータを届けると言いましたが、どのような仕組みになっているのですか? 

事前に送信側がデータを送ることを相手に知らせて、相手が受信できたことを確認できたら送信側からデータを送るの。もし応答が無かったら、送信側はデータを再送信する仕組みね。だから通信の信頼性が保たれているのよ。

さっき、マルチキャストアドレスは「UDP」というプロトコルを使うと言っていましたね。

そうね。UDPはコネクションレス型と言って、信頼性よりも通信の効率性を重視するの。相手の受信状況を確認しないで、仮にデータが届かなくても再送信しないで次々とデータを送り続けるの。通信の効率性と迅速性を優先していると言えるわ。 

ちなみにエニーキャストアドレスはどちらのプロトコルなのですか?  

エニーキャストアドレスはその仕組み的に、データを送信しても同じホストに届くとは限らないの。だからエニーキャストアドレスは「TCP」や「UDP」のプロトコルを利用できないわ。だから、エニーキャストアドレスをユニキャストアドレスに変換するAARP(Anycast Address Resolving Protocol)というプロトコルを使ってTCPを利用しているわね。 

いろんな方法があるのですね。

マルチキャストアドレスのメリット・デメリット

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マルチキャストアドレスにもメリット・デメリットがあると思うのですが、それも教えてもらってもいいでしょうか?

マルチキャストアドレスのメリット

じゃあ、まずはメリットからね。

送信負荷が少ない

マルチキャストアドレスは、ネットワーク機器がデータを自動で複製して、1回の通信で送信したい相手全員に情報を届けられるの。だから送信者の回線にかかる負荷を少なくできるわ。大容量のデータを送っても、通信速度が低下する輻輳が発生しないのよ。

輻輳については任せてください!

心強いわね! それに比べてユニキャストアドレスは1対1の通信だから、データを受信する人の分だけデータ送信量が増えてしまって、送信側の負担が大きくなるのね。

確かにそれぞれのパソコンに1対1でデータ送信していたらネットワークがパンクしそうです。

そうね。ちなみにエニーキャストアドレスは、グループ内で距離が最も近い1つのノードとやりとりを行うものだから、マルチキャストアドレスとは仕組みが異なっている点に注意ね。

通信の遅延が少ない

マルチキャストアドレスはUDPで通信を行うから、通信の遅延が少ないの。だからスループットを高くできるのね。スループットは時間当たりのデータ通信速度のことよ。

僕もマルチキャストになって時間当たりの仕事の処理速度を上げたいです!

スループットなだけにスルーするわ。それで、スループットが高いと応答速度が速くなるから、通信の遅延が少なくなるわね。逆にユニキャストアドレスはTCPの通信だから、通信速度が低速になって遅延が発生しやすくなるの。

エニーキャストアドレスはどうなります?

エニーキャストアドレスはその仕組み上、応答時間を短縮できるから、マルチキャストアドレス同様に通信速度も比較的速めにできるわね。

アドレス管理が容易

マルチキャストアドレスでは、グループに割り当てられたIPアドレス向けにパケットを送信するわよね。だから、もし会社に退職者が出てグループに所属するメンバーが変わっても、グループに割り当てられたIPアドレスは変わらないの。だからIPアドレスの管理がしやすいわ。

ユニキャストアドレスは、グループに所属するメンバーが変わるたびにIPアドレス設定を変更する必要があるの。その分、手間がかかるわね。

一方で、エニーキャストアドレスはグループ内で同一のIPアドレスが割り当てられるんでしたよね。

そう。だからエニーキャストアドレスもマルチキャストアドレス同様、IPアドレスは比較的楽にできるの。

金銭的・時間的コストを低減できる

マルチキャストアドレスは送信者の負荷が少ないという話をしたと思うけれど、その分大規模なサーバーやネットワーク機器を揃える必要がないから、予算をかけずに配信できるの。また1対多というマルチキャストの強みを生かして、1回の送信で多数の受信者にデータを届けられるから、時間的なコストも減らせるわ。

ユニキャストアドレスは1対1が基本だから、多くの人に発信するためには高スペックで大規模な機器を揃える必要ね。だから予算もかかるわ。そして大勢に配信するから時間的コストもかかるの。

エニーキャストアドレスはその分コストを抑えられそうですね。

そう! エニーキャストアドレスはサーバーにかかる負荷も減らせるから大規模なサーバーを必要としないの。だから金銭的コストを抑えられるわ。ネットワークも効率的にできるから、時間的コストも減らせるの。

マルチキャストアドレスのデメリット

マルチキャストアドレスのデメリットについても教えてください!

設定が煩雑になる

まず、マルチキャストアドレスは設定が煩雑なの。マルチキャスト通信を行う場合、マルチキャストアドレス用の経路制御プロトコルの「PIM」とか「DVMRP」という設定が必要なの。

何がなんだかわかりません!

まあ、端的に言うとネットワーク自体が複雑で専門的知識が必要ということね。だから構築するのは簡単ではないの。

ユニキャストアドレスは1対1の通信だから、設定は簡単よ。それに比べてエニーキャストアドレスはIPv6から登場した新技術だから、まだまだ発展途上なの。設定方法についても手探りなのね。

信頼性に懸念がある

マルチキャストアドレスはデータ転送にUDPを使用するけれど、双方向で通信を行う時には、データが正しく送信されなかった場合に再送するように実装する必要があるわ。

マルチキャストアドレスはUDPだから、信頼性よりもスピード重視になっているということですね。

その通りよ。ユニキャストアドレスはTCPを用いるから、信頼性があるわ。ちなみにエニーキャストアドレスは、さっき言ったようにTCPでの通信もできるから、信頼性もあるわね。

IGMPスヌーピング機能で効率的なネットワークを

IPv4ネットワークを使ってマルチキャストを行う場合、IGMPという通信プロトコルがあります。IGMPは、動画配信などの際に複数のホストが1つのIPアドレスを共有し、同じデータを受信できるようにします。1回のデータの送信だけで複数のホストへ送信できるため、ネットワークの効率的な利用が可能です。

ところが、IGMPはデータ配信を効率化できるものの、IPアドレスを共有しているすべてのホストにデータが送られます。そのため、受信を必要としていないホストにも届いてしまいます。

そこで、データの受信を必要としていないホストがないかスヌーピング(snooping。のぞき見という意味)し、データ配信が不要なホストにデータが送信されないようにします。これがIGMPスヌーピングです。IGMPスヌーピングによって、マルチキャスト通信のネットワークを効率的に利用可能です。

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ネットワーク効率化をお考えの方は、ぜひお問い合わせください。御社のお悩みを解消いたします。

 

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