CSMA/CAとは? CSMA/CDとの違いや、その仕組みについて解説

CSMA/CAとは? CSMA/CDとの違いや、その仕組みについて解説

CSMA/CAとは「Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance(キャリア検知多重アクセス/衝突回避)」の略称であり、Wi-Fiに代表される無線通信で標準的に用いられているプロトコルです。CSMA/CAとは何か、「CSMA/CA」と「CSMA/CD」の違い、「CSMA/CA」の隠れ端末問題/さらし端末問題など、その仕組みや意義を理解するためのポイントについて解説します。 


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CSMA/CAとは?

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先輩、また用語について質問があるのですが…。 

いいわよ! 何でも聞いてね。 

CSMA/CAとは何ですか? 

CSMA/CAは、一度に送信と受信のどちらかしか行えない「半二重通信」を実現する時に、データの送信中に衝突が発生しないようにするための仕組み。まずは「半二重通信」とは何なのか、そしてCSMA/CAはどのように機能しているのかなどについて解説していくね。 

「半二重通信」とは? 

 

「半二重通信」とは、送信・受信を交互に切り替え、ひとつのネットワークでデータの送信と受信を行うことを可能にする通信方法です。一方、送信と受信のそれぞれに独立したネットワークを用意することで、データの送信と受信を同時に行える通信方式を「全二重通信」といいます。 

 

たとえば、話しているときに相手の声を受信することはできず、相手の声を聴いているときにこちらから情報を送れない「トランシーバー」は半二重通信ですが、話しながら相手の声を聴くことができる「電話」は全二重通信です。 

 

全二重通信には通信効率の高さや低遅延、コリジョンが回避できるといったメリットがあります。しかし、技術的な実現の容易さやシンプルなネットワーク構成が可能な点、コストの低さなどから初期のイーサネットや無線通信では半二重通信が多く採用されてきました。そこで、通信の事故であるコリジョン(Collision)を回避(Avoidance)するための仕組みが、「CSMA/CA」なのです。 

 

▶コリジョンドメインとは? ブロードキャストドメインとの違いやコリジョンの回避方法について解説 

 

半二重通信では、ネットワークでつながったデバイスAとデバイスBの双方がデータを送信することで、コリジョンが生じます。その結果としてデータの破損や再送に伴う通信の遅延が生じるため、円滑なネットワーク利用のためにはコリジョン対策が欠かせません。 

 

CSMA/CA」はどのようにコリジョンを回避するのか? 

 

CSMA/CAは、どのようにしてコリジョンを回避するのでしょうか。3つのステップでみていきましょう。 

1.キャリア感知 

データを送信する前にチャネルが空いている(ほかの通信が行われていない)かどうかを確認します。通信状況を確認する手順を「キャリア感知(Carrier Sense)」といい、キャリアは「搬送波」とも訳されます。 

2-1.チャネルが開いている場合:待機とデータ送信 

デバイスが送信しようとしているときにチャネルが空いている(他の通信が行われていない)場合は、一定のランダムな時間待機したうえでデータ送信を開始します。このランダム性により、複数のデバイスが同時に送信を再試行する確率を減少させます。この時間間隔をIFSInter Frame Space フレーム間スペース)といい、IFSにはSIFSDIFSRIFSなどさまざまな種類が存在します。

2-2.チャネルが使用中の場合:待機とキャリア感知 

デバイスが送信しようとしているときにチャネルが使用中であった場合は、一定のランダムな時間待機してから再度キャリア感知を行います。そこでチャンネルが空いている場合は、一定のランダムな時間(バックオフ時間)待機したうえで「2-1」のステップに移ります。

3.データ送信 

バックオフ時間の待機を経て、最も待ち時間が短かったデバイスがデータを送信します。データの受信が成功した場合、受信側デバイスは一定時間待機したうえで、送信側デバイスにアクノリッジメント(ACK)信号というものを送信します。これにより、データが正常に受信されたことが確認されます。複数の端末がデータの送信を待機している場合は、同じ手順を繰り返します。 

 

「CSMA」の「CS」は「キャリア感知(Carrier Sense)」、「MA」は「多重アクセス(Multiple Access)」を意味します。多重アクセスとは、複数のデバイスが同じ通信媒体を共有し、アクセスすることを指します。この方式により、多数のデバイスが同一の通信インフラを効率的に利用できます。 

「CSMA/CA」と「CSMA/CD」の違い

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ところで、似たような言葉に「CSMA/CDという言葉がありますが、この2つの違いについて教えてください。 

紛らわしいよね。わかったわ。今から「CSMA/CD」とは何なのか、「CSMA/CA」と何が違うのかについて解説していくね。 

CSMA/CD」とは 

 

CSMA/CDとは「Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection(キャリア検知多重アクセス/衝突検出)」の略称であり、主に有線通信で用いられてきました。「CSMA/CD」も「CSMA/CA」と同様にキャリア検知を行い半二重通信において多重アクセスを実現するための技術です。 

 

ただし、「CSMA/CD」は「CSMA/CA」と違ってチャネルが空いている(他の通信が行われていない)場合にはすぐに通信が開始されます。そこでコリジョンが生じたら、ランダムなバックオフ時間を設けたうえで再度通信が試みられますが、これは「CSMA/CA」と変わりません。近年は適切なネットワークの制御を行うスイッチングハブが普及したことにより、「CSMA/CD」は今ではほとんど使われないレガシーな技術となっています。 

「CSMA/CA」が無線通信、「CSMA/CD」は有線通信で主に用いられてきた理由 

 

「CSMA/CA」はWi-Fiなどの無線通信で用いられ、「CSMA/CD」はイーサネットなどの有線通信で主に用いられていました。無線通信はコリジョンの検知が難しく、後述の「隠れ端末問題」や「さらし端末問題」などが発生する可能性がある一方、有線通信では物理的にネットワークがつながっているためコリジョンの検出が容易です。 

 

そのため、無線通信ではコリジョンを事前に回避するためのメカニズムを持つ「CSMA/CA」が、有線通信ではコリジョンを回避するのではなく検出してから対処する「CSMA/CD」が適しているのです。 

「CSMA/CA」の隠れ端末問題/さらし端末問題とは?

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ついでに言うと、「CSMA/CA」には「隠れ端末問題」「さらし端末問題」といった特有の問題が存在するの 

初めて聞く言葉です。この2つについて、詳しく教えてください! 

了解! 

隠れ端末問題とは? 

 

「隠れ端末問題」は、無線ネットワークにおけるコリジョンの一因となる現象で、物理的な障害物や距離のために特定の端末がほかの端末の存在や通信を検知できない状況を指します。たとえば、端末Aと端末Bが直接お互いを認識できない場合、両者が同時にアクセスポイント(AP)であるCと通信しようとすると、Cでデータの衝突が発生する可能性が高くなります。 

 

隠れ端末問題を軽減するために用いられるのが、RTSCTSという仕組みです。デバイスはチャネルが空いていることを確認したら、送信前にRTSRequest to Send)信号というものを送信します。この信号は、送信の意図を通知します。APRTS信号を受け取ったら、CTSClear to Send)信号というものを返します。CTS信号により、RTSが届いた端末には送信が許可されたことが通知され、そうでない端末は自分以外のデバイスが通信中であることを検知できます。 

 

このように「CSMA/CA with RTS/CTS方式」で隠れ端末問題は解決できます。ただしRTS/CTSのやり取りに通信時間が費やされることになるため、実際には電波の届きにくい端末がある場合や前述のACK信号が返ってこないことが続いた場合に、 RTS/CTSが機能する仕組みを設けるのが一般的です。 

さらし端末問題とは? 

 

さらし端末問題は、隠れ端末問題とは反対に、無線ネットワークにおいて特定の端末がほかのすべての端末の通信を検知できるために、過度に送信を控えざるを得ない状況を指します。これにより、その端末が適切なタイミングで通信を行えず、ネットワーク全体の効率が低下します。 

 

たとえば、端末Aと端末Bが頻繁に通信を行っており、その信号を端末Cも検知しているとします。端末Cは別のAPと通信を行う際、誤って端末Aと端末Bの通信を待機することになってしまい、結果として一定時間あたりに転送できるデータ量であるスループットが低下します。 

 

さらし端末問題の解決法としては、端末の通信範囲を適切なものに調節する、別々の通信に異なる周波数チャネルを割り当てるなどが挙げられます。 

Instant Onアクセスポイント搭載機能は、「CSMA/CA」のスループット低下問題を解消する

CSMA/CA」とは何か、「CSMA/CD」とは何が違うのかなどの基本ポイントについて説明してきました。半二重通信におけるコリジョンを防ぐ方式として長年採用されてきた「CSMA/CA」ですが、通信ごとにIFSを設ける関係上、スループットが低下するという問題を抱えていました。 

 

その解消につながる技術として挙げられるのがMIMOMultiple Input Multiple Output:マイモ)です。MIMOは複数の送信アンテナと受信アンテナを使用して空間多重化を実現することで、通信の高速性や信頼性、伝送効率を向上させる技術であり、CSMA/CAと組み合わせることで、無線ネットワークの総合的なパフォーマンス向上に貢献します。 

 

Hewlett Packard EnterpriseHPE)が提供する『HPE Networking Instant On』では、MIMOに対応したWi-Fi 6Wi-Fi 6Eによる無線通信を実現する『HPE Networking Instant Onアクセスポイント』を提供しています。 

 

Wi-Fi 6Wi-Fi 6Eでは無線通信の伝搬状況に合わせて通信状況を制御するSpatial ReuseSR:スペシャル・リユース)機能により「隠れ端末問題」「さらし端末問題」を解消することが可能であり、『HPE Networking Instant Onアクセスポイント』では、2x23x34x4など多様なMIMOのラインナップのアクセスポイントが用意されています。 

 

シンプルを極めたスモールビジネス向けネットワークを標榜する『HPE Networking Instant On』は複数端末を同時に接続しても安心な安定性や通信速度の速さだけでなく、クラウド経由で一括設定可能な導入・管理の容易さやコストパフォーマンスの高さも魅力です。無線通信であっても速度に不満を抱くことなく、隠れ端末問題やさらし端末問題を回避しながら安定したネットワーク環境を構築したいと考えている方はぜひ、『HPE Networking Instant Onアクセスポイント』の活用をご検討ください。 

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通信回線の変更を検討する際、様々な通信速度のプランがあるため頭を悩ましていないでしょうか?1G、5Gなどプロバイダによって異なりますが、よくよく見ると「最大」「理論値」という言葉がついています。なぜそのような表記をしているのでしょうか。それはその回線が「ベストエフォート型」だからです。 

本記事ではベストエフォート型の回線の基礎知識について、ギャランティ型との違いやより有効に使うための対策とともに解説します。 

 

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ベストエフォート型とは 

ユウキ
アヤカさん、最近通信回線の変更を検討しているんですが、プランによって通信速度が異なるので迷っています。特に「最大」「理論値」という言葉がよく見られるんですが、これはどういう意味なのでしょうか?

アヤカ
それは「ベストエフォート型」という回線の特性を示しているわ。ベストエフォート型は「最善の努力」という意味で、通信速度の保証がないサービスを指すの。一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)はこういった記載をしてるわ。

本来高価な専用線を多数の人の共用を前提として提供することで、保証はしないものの実用的な速度とのバランスを考慮しながら安価な価格で提供するのがベストエフォート回線のサービスです。

インターネットの現状と品質の測定につきまして

ユウキ
通信速度の保証がないってどういうことですか? 

アヤカ
例えば、インターネット回線の広告で「1ギガ(Gbps)」や「10ギガ(Gbps)」という表示があるでしょう。これは技術規格上の最大速度を示していて、実際の通信速度は多くの要因によって変動することがあるのよ。

ユウキ
なるほど、それってどんな要因があるんですか? 

アヤカ
主な要因は以下の通りよ。

要因 

説明 

リソースの限界 

ルーターやスイッチなどのネットワーク機器は、一定のリソース(メモリ、帯域幅など)を持っています。これらのリソースが飽和すると、新しいデータパケットを処理できず、破棄することがあります。 

エラーの発生 

ネットワーク上での物理的な障害や機器の故障・外部からの攻撃などの要因によりエラーが発生する場合があり、データの伝送が中断されることがあります。 

再送の制限 

データパケットが失われた場合、再送を行うことで伝送を試みることが可能です。しかしベストエフォート型の通信では、再送の回数や時間に制限があるため、ある程度以上の再送を行わないことが一般的です。 

プロトコルの特性 

ベストエフォート型の通信でよく使用されるTCP/IPプロトコルは、データの伝送を保証する機能を持っていますが、それでも一定の条件下ではデータの伝送を保証できない場合があります。 

ユウキ
なるほど~。それに対して通信速度が保証されるようなサービスはあるんですか? 

アヤカ
それがギャランティ型よ。ギャランティ型は通信速度や通信品質に一定の保証を持つサービスなの。契約した通信速度や品質を保証するから、安定した通信が期待できるわ。ただベストエフォート型に比べて料金が高いの。専用回線の設置や運用が必要だから、初期費用やランニングコストがかかるのよ。

ギャランティ型インターネット回線の選び方とその必要性

 

ベストエフォート型の採用が多い理由 

 ユウキ
それならなぜ多くの通信サービスはベストエフォート型が提供されているんですか? 

アヤカ
それは利用料金の低さが大きな理由よ。ギャランティ型は専用回線の設置や運用が必要だからコストが高くなるの。一方、ベストエフォート型は多くの人が共用することを前提としているから安価に提供できるの。小規模な企業やスタートアップでは、ベストエフォート型の利用が一般的よ。高い通信品質や帯域幅が必要とされない場合、ベストエフォート型の回線で十分。でも、金融機関や医療機関のように高い通信の安全性や信頼性が求められる業種では、ギャランティ型などの専用回線や高品質な通信サービスが選択されることが多いわ。

 

ベストエフォート型回線を快適に利用するためには? 

ユウキ
アヤカさん、ベストエフォート型の通信速度をより快適にする方法はないですか?

IPoE方式の採用

アヤカ
まず、IPoE方式の採用を考えることができるわ。IPoE方式はイーサネット(LANケーブルなど)上でIPパケットを転送する技術よ。従来のPPPoE方式方式だと、通信量が増加すると終端装置が混雑して通信速度が遅くなる可能性があったの。IPoE方式だと終端装置を使用せずに直接インターネットへ接続するから混雑が起こりにくくなるわ。IPv6の普及に伴って、多くのプロバイダがこの方式を採用しているのよ。 

ユウキ
IPv6って何ですか?

アヤカ
IPv6は、インターネットの通信を制御するための新しいプロトコルよ。IPv4と比べて、セキュリティ機能が高度で、通信の効率も向上しているの。 

周辺機器の見直し

ユウキ
なるほど。他にもありますか?

アヤカ
通信速度に影響を与える要因として、使用しているネットワーク機器の性能も考慮する必要があるわ。たとえば古いルーターやスイッチを使用していると、データの処理速度が遅くなることがあるの。特に無線LANルーターは、規格によって最大通信速度が異なるから、それに合わせて選ぶことが大切よ。 

無線LAN規格 

最大通信速度 

周波数帯 

IEEE 802.11ax (Wi-Fi6) 

9.6Gbps 

2.4GHz/5GHz 

IEEE 802.11ac (Wi-Fi5) 

6.9Gbps 

5GHz 

IEEE 802.11n (Wi-Fi4) 

600Mbps 

2.4GHz/5GHz 

IEEE 802.11g 

54Mbps 

2.4GHz 

IEEE 802.11b 

11Mbps 

2.4GHz 

IEEE 802.11a 

54Mbps 

5GHz 

ユウキ
通信速度が最大1Gbpsの回線を使っても無線LANの規格がWi-Fi4だと、600Mbps以上の速度は出ないってことですよね? 

アヤカ
その通りよ。1Gbpsの回線をフルに活用するためには、Wi-Fi5やWi-Fi6みたいな新しい規格のルーターが必要になるわ。

ユウキ
なるほど~。それとLANケーブルも気をつけたほうが良いんですか…?

アヤカ
LANケーブルは「カテゴリ」という規格で分類されていて、それぞれのカテゴリによって最大通信速度が異なるのよ。

ケーブルのカテゴリ 

最大通信速度 

CAT8 

40Gbps 

CAT7A 

10Gbps 

CAT7 

10Gbps 

CAT6A 

10Gbps 

CAT6 

1Gbps 

CAT5e 

1Gbps 

CAT5 

100Mbps 

ユウキ
こんなにも違うんですね!じゃあ、快適な通信速度を求めるなら、どのカテゴリのケーブルを使ったらいいですか?

アヤカ
小規模なオフィスでの利用を考えるなら、CAT5e以上のケーブルを選ぶと良いわ。 

 

まずは通信速度を計測してみる 

多くの通信回線はベストエフォート型のため、いかに快適に利用するかが重要です。まずは実際に通信速度を計測してみましょう。あきらかに速度が遅い場合、対策を取る必要があります。無線LANルーターやスイッチの性能が古い場合は変更を検討しましょう。 

通信環境についてお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。御社のお悩みを解消いたします。 

 

 

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