手軽なのにビジネス品質。“1人情シス”に最適なWi-Fiアクセスポイント「HPE Networking Instant On AP21」レビュー
公開日 : 2025/05/22

HPE Networking Instant Onシリーズの新製品「AP21」は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応の小規模オフィス向けアクセスポイントだ。設定後の運用管理の手間を抑えながら、ビジネスシーンに求められる安定した無線LAN環境の提供を実現する。特に注目すべきは、エンタープライズ向け製品でも実績のある「Client Match™」(クライアントマッチ)を搭載している点、そして、「クラウド管理」により管理やメンテナンスがフレキシブルに行える点だ。IT管理者が1人しかいない小規模企業でも安心して導入できる製品として、その実力を検証していこう。
設置場所を選ばないコンパクトボディとシンプルなデザイン
「AP21」は、一辺145mmの丸みを帯びた正方形で、高さ51mm、重量255gというコンパクトなボディを採用している。サイズ感は一般的な家庭用Wi-Fiルータとほぼ同じで、オフィスの天井や壁面に設置しても目立たない。デザインもビジネス環境になじむシンプルなものとなっている。
壁掛けおよび天井レール取り付け用のマウントブラケットが付属品として同梱されており、オフィスや店舗など、場所を選ばずに柔軟な取り付けが可能だ。マウントブラケットの取り付け方法、および天井レールへの設置・壁への設置方法は、オンラインの設置ガイドに図付きで掲載されているので迷うこともないだろう。電源供給方法は付属の電源アダプタもしくはPoEに対応している。消費電力は最大10.9Wと省電力設計で、ランニングコストも抑えられる。
白を基調としたオフィススペースはもちろん、店舗やカフェのような人の集まるスペースや顧客の目に入る場所で設置しても違和感はないだろう。電源とLANケーブルを接続しても、本体を壁にピッタリと設置できるのもメリットだ。
初期設定はスマホアプリだけで完結できる
外観と同様に「AP21」の初期設定手順もシンプルだ。スマートフォンアプリ「HPE Networking Instant On」上の操作で完結できる。
「AP21」をスマートフォンアプリでセットアップするための大まかな手順は以下だ。
- 1.スマートフォンアプリ「HPE Networking Instant On」のダウンロード
- 2.アプリ上でアカウントを作成
- 3.アカウント作成後、ログインし「サイト」(Instant Onデバイスの管理単位)を作成
- 4.「AP21」にLANケーブルを接続し、給電する(アクセスポイントがインターネットに疎通できる環境が必要)
- 5.サイトで「AP21」のシリアル番号を入力し、サイトへ登録
その後は、Wi-Fi用のSSIDとパスワードを設定するだけでWi-Fi環境が使えるようになる。2.4GHz帯と5GHz帯とを同じSSIDで同時に利用できるため区別する必要もない。

マニュアルを見ずとも、画面の指示に従って操作すると10分程度で設定は完了した。複雑な設定や前提知識はなくとも簡単にWi-Fiが利用できるのは、専任のIT管理者やネットワーク管理者がいないことの多い、中小企業のニーズにマッチしたものといえるだろう。
直感的な管理機能とリアルタイムモニタリング
ブラウザ版のクラウド管理画面のダッシュボード
「AP21」の通信状況の確認や稼働状況、メンテナンスはクラウド管理によりほとんどの機能をリモートで行える。スマホアプリ・Webブラウザのどちらからも行え、UIもほぼ共通しているため、どちらかで操作を行えば、もう一方も難なく操作可能だろう。
操作はシンプルだが、家庭用とは一線を画すきめ細かい管理が可能だ。特に有用だったのが、接続先のモニタリング機能だ。
「AP21」に接続する端末がどのようなジャンルのWebサイトやサービスへアクセスしたかの割合が、円グラフによって可視化できる。どの端末がリスクの高いサイトや業務とは関係のないサービスを利用しているか分かるため、不審なアクセスをしている端末だけをAP21のネットワークからブロックしたり、複数の端末をウォッチリストに入れて監視したりするといった対策も簡単に行える。
外出先からのトラブルシューティングも容易だ。例えば、特定のクライアントの接続不良が報告された場合、その端末の接続履歴や電波強度をすぐに確認できる。問題の切り分けが素早く行え、対応時間の短縮にもつながる。
干渉があっても途切れない!Client Match™はストレスゼロ
Instant Onの特長的な機能のひとつであるClient Match™は、最適なアクセスポイントへの自動切り替えをスムーズに行う、HPE Aruba Networking独自の機能だ。もっともリーズナブルな「AP21」にももちろん搭載されている。広いオフィスフロア内での移動時や、デバイスの増減による負荷の変動にも追従し、常に安定した通信品質を維持でき、「場所を変えるとつながらない」「人が増えるとつながらない」といった状況でもストレスなく接続できるものだ。
例えば、Wi-Fi接続中に、2.4GHz帯の電磁波を出す電子レンジと干渉しWi-Fi接続が乱れてしまった経験はないだろうか。Client Match™が搭載されていないアクセスポイントの場合、多くのAPでは、このような場合でもそのまま2.4GHz帯につながり続けるため、解消させるには干渉しない5GHz帯へと手動で接続しなおす必要が生じる。オフィスのほか飲食店などでも、電子レンジやそのほかの干渉源による電波干渉で接続が不安定になるケースはありえるだろう。
一方、Client Match™搭載の「AP21」は、接続状況が悪くなると、最適なAPの最適な周波数帯へ自動的に接続し直すよう端末に促してくれる。電子レンジの電磁波と干渉する2.4GHz帯のバンドに繋がっていても、干渉を検知すると5GHz帯など他のバンドへ自動で再接続してくれるのだ。接続の切り替えはアクセスポイント側からの働きかけで行うため、ユーザーが操作を行う必要がない。そのような小さな手間がなくなるだけでも、ストレスはかなり軽減される。
エンタープライズ級のセキュリティ機能
セキュリティ面では、エンタープライズ製品と同等の機能を搭載。最新のセキュリティ規格「WPA3」による強固な暗号化に加え、VLANによるネットワークの分離も可能だ。社内ネットワークとゲスト用ネットワークのVLANを分けて分離し、また、ゲスト用VLAN内でのデバイス同士の通信を制限するといった制御もできる。
接続先の制御機能も充実している。業務に関係のないアプリケーションやWebサイトへの接続を制限したり、特定のジャンルへだけアクセスしたりできるような制御や、帯域幅使用率を設定することも可能だ。例えば、オンライン会議の帯域を優先的に確保しつつ、動画視聴などの娯楽利用を制限するといった、利用場所や目的に応じた管理が行える。
コストパフォーマンスと保証・サポートも充実
「AP21」は導入後のランニングコストの低さも特長だ。スモールビジネス用としては高機能な管理が行えるクラウド管理は、すべて追加費用不要で利用できる。大企業向けのネットワーク製品などでは、クラウド管理機能は別途有償のライセンスが必要となるケースも少なくない。これはHPE Networking Instant Onシリーズに共通するメリットだ。
本体には2年間の保証期間があり、加えて導入後90日間は日本語での電話サポートが利用可能だ。24時間/365日のチャットサポートは、本体の保証と同様2年間と長期間。期間の開始は購入から2年間となっているため、保証やサポート期間の無駄も生じにくい(2025年2月現在)。
ファームウエアの更新は自動化されており、セキュリティパッチの適用も管理者の手を煩わせない。手間の掛からない運用の実現は、1人情シス環境大きな利点となるだろう。
まとめ:「AP21」は1人情シスにとって理想的な選択肢
「AP21」は、高度な機能を簡単な操作で利用できる点が最大の魅力だ。IT専任スタッフが1人しかいない企業や職場で、安定したセキュアなWi-Fi環境を構築するときに力を発揮できる。
導入後の運用コストも魅力的だろう。Wi-Fi 6対応により長期的な使用にも適している。簡単な導入・運用と安定した性能を両立したAP21は、1人情シスの企業にとって、理想的な選択肢になるだろう。
メーカー希望小売価格は24,200円(税込)。「AP21」はLANポートが1箇所のため、終端装置などと有線接続した場合はLANポートが埋まってしまう。もし有線接続用にLANポート(ダウンリンクポート)が複数必要ならば、ダウンリンクポートを4ポート備えた「AP22D」をおすすめしたい。
著者:常山 剛

コピーライター、編集者。仕事術・生活術を紹介する「ライフハッカー[日本版]」のローンチ前から参画し、2008年の日本版立ち上げ時から編集・ライティングを担当。2011年にライフハッカー[日本版]編集長。メディア運営およびPR企画、広告商品の開発を行う。2012年に自ら企画立案・命名したroomieの編集長に就任。現在はメディア運用経験を生かし、オウンドメディアの編集やコンサルティング、執筆、編集部運営やメディア連携のサポートや提案を行うほか、幅広いジャンルで広告コンテンツの制作・運用も手がけている。