ルーティングプロトコルとは? その役割やIGP・EGPの仕組みについて解説
公開日 : 2024/10/09
ルーティングプロトコルとは、具体的にどのように動作するプロトコルなのでしょうか?ネットワーク内、ネットワーク外で活躍する代表的なルーティングプロトコルの特徴を紹介し、さらにIGP・EGPといった用語の意味や仕組みまで解説します。
ルーティングプロトコルとは
IGPとは
AS内で使用される「IGP」はいくつか種類があるわ。代表的なプロトコルは「RIP」「OSPF」「EIGRP」の3つね。それぞれのプロトコルの理解には、「メトリック」と「ルーティングアルゴリズム」という概念が重要ね。
それぞれ詳しく説明してください!
メトリック
メトリックとは、宛先ネットワークまでの距離です。物理的な距離が大きければメトリックも大きい、というわけではなく、ある基準に基づいて論理的に算出されます。メトリックの算出基準はルーティングプロトコルごとに異なります。
ルーティングアルゴリズム
ルーティングアルゴリズムとは、ルーティングテーブルを作るためのルールであり、ルーティングプロトコルの動作の仕組みを指します。IGPにおけるルーティングアルゴリズムは「ディスタンスベクター型」と「リンクステート型」の2つです。
ディスタンスベクター型
ディスタンスベクター型とは、その名の通り、距離(ディスタンス)と方向(ベクター)に基づくルーティングアルゴリズムです。距離とは宛先ネットワークまでに経由するルータの数であり、方向はネクストホップを指します。
隣接するルータとルーティングテーブルを交換し合うことで、最適ルートのルーティングテーブルを作成します。仕組みが単純であるため、ルータに負荷がかかりにくい点がメリットですが、情報の送受信が多いため、経路に変更が加わった場合のコンバージェンスタイムが伸びてしまう点がデメリットです。
リンクステート型
ルータ同士でインターフェースの状態、帯域幅、IPアドレスなどの情報を把握した上で、最適なルート情報を判断するアルゴリズムです。
ルータがネットワーク全体の状態を把握しているため、ディスタンスベクター型とは異なって変更を適用しやすい点が特徴ですが、各ルータへの負荷は高まってしまいます。
IGPの種類
AS内で使用されるIGPについて、ルーティングアルゴリズムとメトリックの説明を踏まえ、プロトコルごとの違いを解説します。
RIP(Routing Information Protocol)
RIPはディスタンスベクター型のルーティングプロトコルです。定期的にルーティングテーブルそのものをやり取りしてルーティングテーブルを作成します。メトリックには宛先ネットワークまでに経由するルータの数(ホップ数)が使用されており、ホップ数が最も少ない経路が最適回路です。
単純な仕組みで設定がわかりやすいのが利点ですが、宛先にパケットが届かず循環してしまう「ルーティングループ」の発生や、帯域幅が小さい経路の選択による遅延の発生などの問題があります。
小規模なネットワークでの利用が一般的ですが、現在の環境ではその他のプロトコルへの移行が進んでいます。
OSPF(Open Shortest Path Fast)
OSPFはリンクステート型のルーティングプロトコルです。ネットワークを「エリア」に分け、ルータ同士で情報を交換し合って作成した「リンクステートデータベース(LSDB)」から最適ルートを算出します。
通常時は「Helloパケット」を送信して、別のルータが正常に動作しているかを確認しており、変更があったときだけ更新するため、コンバージェンスタイムが短い点が特徴です。
OSPFのメトリックは、帯域幅から算出される「コスト」です。広帯域であるとコストは低く、狭帯域であるとコストは高くなり、コストが低い経路が最適ルートとされる場合が多いです。
コストに差がない場合は、「ECMP(Equal Cost Multi Path)」という動作で、コストが同じルートすべてで通信を負荷分散します。
OSPFは中規模、大規模なネットワークで使用されることが多いです。
EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)
EIGRPはディスタンスベクター型とリンクステート型の利点を取り入れたハイブリッド型のプロトコルです。元々Cisco社独自のルーティングプロトコルでしたが、現在はインターネット技術の標準化を推進する団体であるIETFに仕様が公開されています。
EIGRPでは、まずOSPFと同様に隣接するルータにHelloパケットを送り、「ネイバーテーブル」を作成します。そしてRIPと同様に自分の持つルート情報を交換し合い、すべてのルートを保持する「トポロジーテーブル」をそれぞれで作成したのち、最適ルートを抽出したルーティングテーブルを作成するのです。
メトリックには「帯域幅」と「遅延」が用いられます。メトリックが最も小さいルートを最適ルートとしており、OSPFと同様に負荷分散の動作はECMPです。EIGRPは中規模以上のネットワークでの使用が適しています。
EGPとは
次はEGPね。ASとASをつなぐのがEGPなのだけれど、その代表的なプロトコルが「BGP(Border Gateway Protocol)」ね。
同じような用語がまた…。
似ている用語が多いから気を付けてね。BGPのルーティングアルゴリズムは、経路(パス)と方向(ベクター)に基づく「パスベクター型」と呼ばれるの。経路は宛先までに経由するAS、方向はルート情報を交換する相手を表す「BGPピア」を意味するわ。
これは復習しないと…。
一応、復習はしておいてね。さらに、BGPピアとルート情報を交換して作成した「BGPテーブル」から最適な経路を判断するルールが「ベストパス選択アルゴリズム」よ。ベストパス選択アルゴリズムでは、BGPピア同士のルート情報の交換に使用される「UPDATEメッセージ」に埋め込まれた、「アトリビュート(属性)」と呼ばれる情報をもとに決定するの。そして、選出された最適な経路のみがルーティングテーブルに追加され、BGPピアに伝播されるわ。
今回も教えてくださってありがとうございました! しっかりと復習しておきます。
最適なルーティングプロトコルを選択する
ルーティングプロトコルによって、適用範囲やコンバージェンスタイム、機器にかかる負荷、通信速度が異なります。自社のネットワーク内で用いられているルーティングプロトコルや、ネットワーク間をつなぐルーティングプロトコルの特徴を知れば、自社のネットワーク環境への理解も深まるでしょう。
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そういえばさっきのミーティングで「ルーティングプロトコル」という用語が出てきました。詳しく知りたいのですが、今お時間ありますか…?
ユウキくんのためにリソースは空けているから大丈夫(先輩だしね)。まずはルーティングから説明するね。
ありがとうございます!
「ルーティング」とはデータの宛先が接続されているネットワークを判断し、経路を導き出して転送先を切り替える機能よ。宛先ネットワークの情報と、次の経由先の情報(ネクストホップ)を管理する「ルーティングテーブル」というものを使用するの。
ふむふむ…。
ルーティングテーブルの作成方法には、ルート情報を1つ1つ手動で設定する「スタティックルーティング」と、自動で作成する「ダイナミックルーティング」があるわ。このダイナミックルーティングにおいて、ルータ同士でルート情報を交換する役割を担うのが「ルーティングプロトコル」よ。
なるほど。ダイナミックルーティングというもので使われるのがルーティングプロトコルなのですね(メモメモ)。
あ、そうだ。ルーティングプロトコルの理解に重要な概念として「コンバージェンス(ルーティングコンバージェンス)」があるの。コンバージェンスとは、すべてのルータに最新のルート情報が行き渡っている状態ね。コンバージェンスになるまでの時間を「コンバージェンスタイム」と言うのだけれど、これはルーティングプロトコルによって異なるわ。
いろいろな言葉が出てきて大変です…。
1つずつ押さえていこうね。さらにルーティングプロトコルは、ネットワークの単位を表す「AS(Autonomous System、自律システム)」を基準に2つに分類されるの。1つ目はAS内で使用される「IGP(Interior Gateway Protocol)」というもので、2つ目はAS間で利用される「EGP(Exterior Gateway Protocol)」というものね。
あの…、ついていけていないんですが…。
大丈夫。1つずつ説明していくよ。