近年、ネットワーク上でやりとりするデータの量が増えています。総務省の『通信利用動向調査報告書』によると、令和4年の時点で過半数の企業がテレワークを導入しており、クラウドサービスを利用する企業は7割を超えています。このような状況下から、通信障害や遅延が問題となる企業の増加も予測されます。 

その対策の一つがQoS(Quarity of Service)です。QoSは重要な通信に障害や遅延が起こるのを防ぐことができます。本記事では、QoSの方法のひとつである帯域制御について、機能や導入方法などを解説します。 

帯域制御とは、QoSのやり方のひとつ

ユウキ
アヤカさん～、SOSです！QoSって何ですか？

アヤカ
韻を踏んできたわね…。QoSは「Quality of Service」の略で、通信の効率化を目指す技術よ。送信するデータを重要度ごとに区別し、通信量や順番を調整するの。わかりやすく説明すると、QoSには、大きくわけて「帯域制御」と「優先制御」の2種類があるわ。

帯域制御とは？

ユウキ
帯域制御とは具体的にどんなものなんですか？

アヤカ
帯域制御は、特定の通信に対して帯域幅を設定し、通信速度を制御する方法よ。帯域幅は、データが通る道幅のこと。帯域幅が広いほど、多くのデータを速く送れるの。この制御には、「帯域保証」と「帯域制限」という2つのアプローチがあるわ。

ユウキ
また2つある！これ以上分割されたら頭が回らないよ…。

アヤカ
たとえば動画は、通信が遅れると品質が落ちるでしょ？こういう場合、帯域の下限値を設定して品質を保つのが「帯域保証」。一方で、企業内で大きなデータを送るときは、帯域幅を占有し過ぎないように上限値を設定するのが「帯域制限」よ。これで限られた帯域内で効率的に通信できるの。

優先制御との違い

ユウキ
なんとなく分かった気がする！帯域制御と優先制御はどう違うのですか？

アヤカ
優先制御は、データごとに優先度を設定し、優先度が高い順に処理するの。優先度の高いデータは常に優先されるから、重要なデータの遅延が少ないのよ。帯域制御とは別に設定できるから、組み合わせて使うことも多いわ。例えば、遅延に敏感な音声データは、優先度を高くして帯域幅を狭く設定するの。

帯域制御の必要性

ユウキ
じゃあ、なぜ帯域制御が必要なのですか？

アヤカ
通信が遅れる場合、ネットワークの帯域を広げることも考えられるけど、それにはコストと手間がかかるの。調査やネットワークの再構成、機器の設定や買い替えが必要になるわ。そこで、限られた帯域内で快適な通信を実現するために帯域制御を行うのが効果的なのよ。

ユウキ
う～ん…まだぼんやりとしています。

アヤカ
さっきと同じように、高速道路を例にしてみましょう。車の交通量が多くなると、渋滞が発生するよね。その時に車線を減らして、全体の速度を抑えるのが帯域制御よ。優先制御は、救急車を優先的に走らせる車線を用意することね。帯域制御と優先制御は、「すべての車がスムーズに走れるようにする」のか、「特定の車を優先的に走らせる」のかの違いね。

ユウキ
なるほど、そういうことか！

帯域制御に用いられる機能

ユウキ
帯域制御が必要な理由は納得したのですが、どんな機能が使われるのですか？

アヤカ
帯域制御には、データを分類したり、送るタイミングを調整したりする機能が使われるのよ。導入時には、どの機能が必要かをしっかり検討することが大切ね。まずはクラシファイ機能から教えるわ。

クラシファイ

ユウキ
あの音楽ストリーミングサービスの…？

アヤカ
もっとおもしろいボケを用意しなさい！クラシファイ機能は、IPアドレスやポート番号の情報を基にデータを分類する機能よ。データを適切に管理するためには、それぞれを分けて考える必要があるの。この機能でグループ別にデータを処理できるわ。

ユウキ
「困難は分割せよ」とはこのことか！

アヤカ
デカルトは知ってるのね。…。ちょっと違う気がするけど。

マーキング/キューイング/スケジューリング

アヤカ
次はマーキング、キューイング、スケジューリングの3つね。

ユウキ
スケジュールを組むのは得意ですよ！特に飲み会は！キューイングは聞いたことないなあ。

アヤカ
これらは主に優先制御で使われる機能ね。分類されたデータグループに優先順位をつけるマーキングをして、それに基づいてキュー(データの待機場所）に振りわけるキューイングを行うの。その後、キューに割り当てられた帯域幅や優先度に応じてデータを取り出すスケジューリングをするわ。この機能のおかげで、特定のデータの通信を効率的に行えるのよ。たとえば、ある会社で、営業部から得意先への注文データと、製造部から工場への生産指示データが同時に送信されたとするでしょ。これらのデータはネットワークを介して送信されるけど、ネットワークが混雑していると、データが届くまでに遅延が生じることがあるの。この場合、マーキングによって、注文データと生産指示データを優先度の高いデータと低いデータに分類するのよ。次にキューイングによって、優先度の高いデータは低いデータよりも先にキューに保管されるわ。そしてスケジューリングによって、優先度の高いデータは低いデータよりも先に処理されるようにするの。これによって、注文データは迅速に処理され、生産指示データは遅れても問題なく処理されるのよ。

アドミッション制御

アヤカ
3つ目がアドミッション制御ね。アドミッション制御は通信を開始する前に、帯域が確保されているかどうかを確認し、状況に応じて通信を制御する機能よ。

ユウキ
石橋を叩いて渡るのですね。

アヤカ
通信が混雑しているのに新たにデータを送ろうとすると、帯域にデータが溢れてしまって、通信がうまくできないからね。その対策として、事前にネットワークの状況を確認し、通信を開始するかを判断するの。

シェーピング/ポリシング

アヤカ
最後に、シェーピングとポリシングについて教えるね。

ユウキ
シェービングは毎日欠かさずやってますよ！

アヤカ
「ビ」じゃなくて「ピ」だから！シェーピングは、帯域の最大値を超えたデータを一時的に蓄積し、後で送る方法よ。データの品質を保ちてるだけど、遅延が発生する可能性があるわ。一方、ポリシングは超過分のデータを破棄するの。遅延は少なくなるけど、データの欠けが生じやすいのよ。例えば、リアルタイム性が重要な音声や動画の通信にはポリシングを使うことが多いわ。

ユウキ
何事も使い分けが大事ですね。

帯域制御を導入する3つの方法

ユウキ
では、帯域制御を導入するための具体的な方法にはどんなものがありますか？

アヤカ
いくつかの方法があるわ。実は既存の機器を使って帯域制御を行える場合もあるの。ユーザーの数や使っているアプリケーションの種類などをもとに現在のネットワーク環境を把握して、最適な方法を選ぶことが大切よ。

帯域制御ソフトをインストールする

アヤカ
まずは、帯域制御ソフトをインストールね。ネットワークの管理者がパソコンに帯域制御ソフトをインストールして、ルーターと連携させるの。これでネットワーク全体の帯域制御が可能になるわ。

ユウキ
具体的にはどんなことができるのでしょうか？

アヤカ
たとえば、大きなファイルを送信する際に通信に影響を及ぼさないように帯域の上限を設定することができるの。また、WindowsのQoSポリシーを利用すれば、比較的簡単に帯域制限をかけられるわ。

ユウキ
さすがMicrosoftですね！

ルーターやスイッチのQoS設定を利用する

アヤカ
次がルーターやスイッチでQoS設定する方法ね。 QoS設定が可能なルーターやスイッチでは、帯域制御を取り入れることができるわ。たとえば自宅のWiFiでも、QoS設定に対応していればサービスやアプリケーションの種類ごとに使える帯域や優先度を設定し、一人が帯域幅を占有してしまう事態を防げるの。

ユウキ
比較的検討しやすいやり方ですね。

アヤカ
ただしルーターはネットワーク通信の中継を行うことが本来の役割だから、帯域制御の専用機器ほど細かく通信を分類ができなかったり、機能が多かったりするわけではないのよ。

帯域制御装置を導入する

アヤカ
最後に、帯域制御装置の導入が考えられるわね。帯域制御に特化した装置は、より高機能よ。通信内容を細かく分類できたり、アドミッション制御が使えたりするメリットがあるわ。多くのアプリケーションの通信を制御したい場合には特におすすめよ。

ユウキ
まずは現在のネットワーク利用状況を分析して、必要かどうか、どのような機能が必要かを考えることが大事ですね。

帯域制御を活用して帯域不足を解決しよう

帯域不足は、現在のネットワークの利用状況を可視化することで対処方法が判断しやすくなります。帯域を拡張することなく通信品質を改善できれば、コストの削減に繋がります。帯域制御はQoSのやり方のひとつで、ネットワーク利用をより快適にするために便利な方法です。新たな機器を購入しなくても、既存のPCやルーターを使って行えることもあります。限られた帯域を有効活用するために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

企業の規模や業種、通信量によって、最適なネットワーク製品は異なります。通信速度に影響する要因は様々で、問題解決に困ってしまう場合も多いのではないでしょうか。

通信環境についてお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。御社のお悩みを解消いたします。